2020年04月29日

「点毎歌壇」入選歌 嶋茂代選

[2019年]

白梅の古木に触れて瞽女唄の梅の口説を口の端にする
選評
「梅か桜か蓮華の花か」 瞽女唄の三味線も聞こえてきそう。早春の喜びと哀愁、白梅の香も漂ってくる。美しい詩情がうれしい。

幾度(いくたび)も夢に訪ねし故郷の土足裏に踏みしめて行く

輪にしたるロープを握り伴走者と「桃源郷マラソン」のスタートを切る

炎天下 人の同情などよそに盲導犬はひたすら歩く

想うこと想うがままに歌に詠む自由のあるも平和なれこそ

われ独り関東平野に立ち向かい喉も裂けよと唄う瞽女唄
選評
あの広い平野を目の前にして「瞽女唄」を。こんなことが叶うなら、私もやってみたい。広大な発想になんの遠慮があるものか。

海鳥も入り江に寄せる潮騒もわれらも歌う北海の朝

子を背負いハーネス握り幾星霜(いくせいそう)通いしスーパー今日店を閉ず
選評
昨今の世相。近くの店が次々と閉店して、この先に不便、不安、絶望さえ感じつつ、訴えるすべもない。せめて三十一文字の力を借りよう。

四頭の引退犬を看取りくれしこの真心にいかに報いん

われは花 夫は骨壺胸に抱きアイメイト眠る墓へとのぼる

触らねばわからぬわれも触るなと怒鳴りし人も許せよ桜

われの愚痴 夫のぼやきも顔上げて尾を振りながら聞く盲導犬
選評
聡明な盲導犬のありさまが目に浮かぶ。心和む1首である。

義妹(いもうと)の御霊よギンヤンマとなりて世界を巡れ心ゆくまで

大ホール盲女性らが埋めつくし研修大会ここに始まる

われの指に指を重ねて絵の中の森描かせてくれたり友は
選評
 こんな優しい友情を一首に詠みあげてくれたことはうれしい。少し冷ややかになった現代を感じるからだろうか。

[2020年]

両の手に友の温もりもらいつつ波に乗るごとステップを踏む

感染の不安恐れて暮らすより今を生きんと三味線を取る
選評
世界中、コロナに萎縮するばかり。せめて元気な今、このときをアクティブに過ごそう。心をしっかり持つことも災いを退散させる一助となろう。
posted by 里枝子 at 18:09| Comment(0) | 短歌