その歌の中から「信毎歌壇」、「点毎歌壇」等に投稿しています。
「信毎歌壇」への投稿は、100回になりました。
私にとって、入選は、容易ではありませんが、また幾つかの歌ができましたので、近
況報告に代えて、送ります。
◇瞽女として生きて死にたる女たち思いめぐらす音訳図書に (真中智久・選)
ごぜと して いきて しにたる おんなたち おもいめぐらす おんやく としょ
に
◇サラブレッドの 手綱取るごと新しい盲導犬のハーネス握る (太田淑子・特選/
小宮山久子・特選)
さらぶれっどの たづな とる ごと あたらしい もうどうけんの はーねす に
ぎる
<太田淑子選評> 一読して非常に明るく強い生命力を感じた。新しい犬との出会い
は人も犬も緊張と期待に満ちていることだろう。若い犬のハーネスをしっかり握った
時作者の思いは弾んでサラブレッドの手綱を連想した。走る芸術品と呼ばれる馬から
は生命の躍動感が伝わって来る。それに匹敵するこのハーネスの握り具合よと、比喩
がみごとに決まってこれからの生きる喜びがひしひしと伝わって来る一首となった。
<小宮山久子選評> 作者は盲導犬と行を共にする方なのでしょう。新たな伴奏者と
なる犬への大いなる期待と、微かな虞れを比喩する初、二句。きっぱりとした行動描
写の結句。両者相俟って、生き生きと作者の姿が浮かび上がってくる一首です。
◇「あたしのためにありがとうございました」とお辞儀するさっちゃん七つ振り袖姿
(小池光・選)
「あたしの ために ありがとう ございました」と おじぎ する さっちゃん
ななつ ふりそで すがた
◇瞽女として生きて死にたる女たち思いめぐらす音訳図書に (真中智久・選)
ごぜと して いきて しにたる おんなたち おもいめぐらす おんやく としょ
に
◇逃げられぬ人もいるらん目を閉じてラジオ聞きつつ必死に祈る (小池光・二席
)
にげられぬ ひとも いるらん めを とじて らじお ききつつ ひっしに いの
る
<選評> このたびの能登の地震は大きなショックを与えた。ラジオの絶叫に逃げた
くも逃げられない人がいることを思う。
◇わが三味に「瀧」と名付けてその飛沫浴びる如くに寒稽古する (米川千嘉子・
選)
わが しゃみに 「たき」と なづけて その ひまつ あびる ごとくに かんげ
いこ する
◇名を呼べば身を寄せてくる愛犬に慰められてコロナに耐える (真中智久・選)
なを よべば みを よせて くる あいけんに なぐさめられて ころなに たえ
る
◇カーソルを動かしながら味わいぬ牢獄からの母こう短歌 (真中智久・選)
かーそるを うごかしながら あじわいぬ ろうごくからの はは こう たんか
◇孫帰り庭にちょこんと雪だるまプチトマトの目ニンジンの鼻 (米川千嘉子・選
)
まご かえり にわに ちょこんと ゆきだるま ぷちとまとの め にんじんのは
な
◇土砂の下から救い出されし蕾椀両手で包めば祈りの姿 (小島なお・4席)
どしゃの したから すくいだされし つぼみわん りょうてで つつめば いのり
の すがた
<選評> 膨らんだつぼみがほころぶかたちのつぼみ椀。包む両手のなかには守るべ
きものがある。
+俳句一句
冬暖か手を置く息子の肩広し (桑田和子・2席)
ふゆ あたたか てを おくむすこの かた ひろし
<選評> この冬は、全国的に暖冬が予想されている一方、北日本を中心に関東や太平
洋側では大雪となるようだ。成長した息子の肩幅は広く大きい。息子の肩に手を置き
、その逞しさに安堵する母の姿が浮かぶ。
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